愛媛県今治市玉川町中村・嶋御門神社の西にある墓地の近くに弘法さんとよばれる重利大明神があります。

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嶋御門神社を西に進むと道路沿いに重利大明神の看板が設置されています。

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墓地を進み・・・

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看板の矢印通りに右に進み・・・

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さらに奥に進みます

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重利大明神のお社

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祠と一石五輪塔が祀られています。

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このあたりに住んでいた3匹のタヌキの伝説が残っているそうです。
「こうぼう狸」のお話

今より百年くらい昔のことです。
中村下谷の嶋御門神社の裏側に、大人三人が手を伸ばして、やっととどくほどの古い大きな松がありました。
その大松には、大狸が三匹住んでおりました。 
その三匹の狸は、仲がいいのやら悪いのやら、じゃれあったり、ケンカをしたり、月夜の晩には腹鼓を競い合い、酒盛りをしたりと、毎日あきることもなく暮らしておりました。

ところが、年月がたって、その大松は古くなって枯れてしまいました。
そこで、狸たちは住むところがなくなってしまい、泣く泣く住み慣れた大松を後にし、引っ越しをすることになりました。

そして 新しい住処(すみか)を探し回りましたが なかなか良い場所は見つからず 
「ここは ちいと風通しが悪い、ここは狭苦(せまくる)しいから嫌じゃ」
だのと迷ったあげくに、中村のはしにある石垣のところに住みつきました。

狸たちは、いたずら好きで、時々村に出てきては、畑を荒らしたり、村人や牛や馬に化けてだましたり、お弁当を盗んだりと、悪さばかりしていました。
「や~い。や~い。人間だと思ったか?おいらは、狸だぞぃ」
「くそ~、まただまされた」

ある日のこと、吉松さんという人が、畑仕事の帰りに、橋を渡っていました。
すると 橋の真ん中に、狸がいたずらで置いた大きな石が、ころがっていたので
「こりゃぁ迷惑じゃのう のけとかんと危ないわい」
と、橋の上から「ポーイ!」と投げ捨てました。

「ゴーン!」
橋の下で 誰かがイタズラに引っかかるのを、待っていた狸でしたが、その一匹の頭に 吉松さんの投げた石が、運悪く、命中してしまいました。

「いだだだだだだ~!」
見たこともないような大きなたんこぶをつくった狸は、自分が悪さをして置いた石だったこともすっかり忘れて、カンカンになっておこりました。

「くっそ~!こんな痛い目にあわせよった吉松め!ゆるせん!」
「と り つ い て やる~!」
そうして、眠っている吉松さんに「ヒュルン!」と、とりついてしまいました。

さあ大変!狸にとりつかれた吉松さんは、、四つん這いになり村中を走り回ったり、畑を荒らして逃げ回ります。
その姿は、まさに狸そのもの!
「ありゃ~、吉松さんは、狸にとりつかれてしもとるわい」

近所の人は、これは大変だとみんなで力を合わせて、嶋御門神社のすぐ下に、小さなお社を立てました。
そして、大狸たちを、おいしそうなフカフカのお饅頭でおびき出しました。
「あれは何じゃろう?」、「うまそうなにおいがする」
「こりゃぁ、たまらん!よだれが出るのう」

狸たちがフラフラと、お社に入るやいなや 扉は「ピシャッ」と閉められ、逃げられないように、狸封じのお札が貼られてしまいました。
「うわぁ~!助けてくれ~!」

まんまと捕まえられてしまった狸たち。
「わしらが悪かった、いたずらはやめる。もう悪さはせんけん。村のためになることするけん。こらいてくれや~」
と大泣きして、村人たちに謝りました。
「しかたがないのう、反省しとるなら、ゆるしてやろわい、そこに住んで、もう悪さはするんじゃないぞ!」
とりついた狸が離れたので、吉松さんも、すっかり元どおりになりました。

それからというもの、心を入れ替えた狸は、村人のいろいろな願い事や頼みごと、いぼ落としなど、不思議な力で叶えてくれるようになりました。
当時は、願いを叶えてもらおうと、お社に足を運ぶ人や、百日のお願をかけてお参りする人も多く、大変賑わっていたそうです。
狸は「こうぼう狸」とよばれ、今も、三匹仲良く力をあわせ、村を見守ってくれています。

「中村の弘坊だぬき」より

愛媛県今治市玉川町中村
玉川支所前バス停より徒歩23分
2020年